11 11月

なぜ今の時代会社において「相互理解」が必要なのか

【沖縄タイムス平成29年5月29日「くらし」紙面より】

今回は、平成29年5月29日(月)付け沖縄タイムス、「くらし」紙面に掲載された「多様さ 尊重する組織に」と題する記事において紹介された内容について、相互理解の立場からお話しさせていただきたいと思います。

【多様な価値観を尊重する組織づくりを目指して】

掲載された記事内容を簡単にご紹介します。

組織コンサルタントの波上(なみのうえ)こずみさんは、自身が育児や家族の介護をしながら働き、仕事のプレッシャーに押しつぶされそうになった過去の経験を生かし、現在既存の枠にとらわれない「働き方」を模索する企業や個人を支援されていらっしゃいます。その際「仕事」か「育児」かの二者択一ではなく、働く人の多様な生き方を尊重できる組織づくりを提案されていらっしゃるそうです。

 

波上さんはこうおっしゃっています。「これからは男性、女性にかかわらず、多様な価値観を表現でき、認められる組織でなければ企業の経営も難しくなるだろう。働き方の見直しを通して経営者自身がいったん立ち止まり、今後の企業の方向性をどう描くか、社員と共有するきっかけにしてほしい」

 

この記事を目にしたとき、「まったく同感」であり、波上さんも私も考え方や向かおうとしているところは一緒であり、違いはその目標を達成するための方法が、波上さんの場合、「働く側と経営者で一緒につくるオーダーメイド型の人材育成プログラムを提案する」方法であり、私の場合、「社長と管理職、管理職と従業員が相互理解を深めあえるプログラムを提案する」という、方法に違いがあるということです。

 

「多様な価値観を表現でき、認められる組織」づくりを目指すうえで、恐らくはどちらの方法も有効だと考えます。

 

その理由をお話しさせていただきたいとおもいます。

 

【会社の発展・成長の重要3要素について】

私は会社・企業・職場という組織が、発展・成長していくためには、3つの重要要素があると考えます。その3つとは、

  • 業務の効率化
  • 人事評価制度
  • 社員教育制度

です。

 

それぞれ詳しく見ていきます。

 

【業務の効率化について】

まず1の「業務の効率化」ですが、日々行っている業務の流れについて、「今の方法に無駄はないだろうか」、「もっと時間、人数、経費を減らして出来ないだろうか」と、定期的に確認、見直しを行う事です。

そうすることによってひいては会社の「労働生産性の向上」をはかっていきます。

 

【人事評価制度について】

2の「人事評価制度」は、「適材適所」という言葉があるように、会社は、仕事の難易度、その人の熟練度に応じた仕事を提供できているかということです。

 

もし仮に持っている能力より簡単な業務を提供したならば、その従業員は与えられた仕事に対し、「つまらない」とか「面白くない」と感じ、本来持っている意欲や向上心を削いでいくかもしれません。

 

逆に持っている能力より難しい業務を提供してしまうと、「難しくて出来ない」と落ち込んでしまったり、「もう続けていられない」と退職へと繋がってしまう恐れもあります。

 

従って理想としては、今の能力に見合った業務を提供しつつ、よりステップアップした業務があることを認識してもらい、「次のステップ」に向けてチャレンジを促します。

 

そしてこの「業務のスキルアップ」は、「昇給・昇格」とリンクされていることによって、互いに補完関係が築かれることになります。

 

更にこの「業務の難易度」と「昇給・昇格」の関係がわかりやすく図式化され、すべての従業員に公表されていると、従業員は自分自身のライフステージに合わせ、計画的に学んでいくことが出来ます。

 

【社員教育制度について】

最後に3の「社員教育制度」についてです。

折角「人事評価制度」に基づき、従業員が「業務のスキルアップ」に向けて意欲と向上心を持って業務に励んでいるにもかかわらず、そのための教育を提供できないでいるならば、従業員の成長は望むべくもなく、引いては従業員自体のモチベーションも低下し、場合によっては退職へとつながりかねません。

 

また「従業員の能力の向上」は、1でお話しした「労働生産性の向上」とも密接に関連しており、「業務の効率化」のひとつとして、「従業員の熟練化」に伴い、業務を完了させるための時間短縮や精度の向上が見込めるようになるからです。

 

以上「3つの重要事項」を見てきましたが、この3つはそれぞれが影響し合っており、この3つのサイクルを回していくことによって、会社の発展・成長につながっていくわけです。

【3つの重要要素と相互理解の関係性について】

では私の手掛けている「相互理解」は、この3つの重要要素の中のどれに該当するのか。

実はこの3つのどれにも該当していないようです。あえて言うのであれば、3の社員教育制度に近いではありますが、「業務のスキル向上」よりは「意識(メンタル)の向上」に近いでしょう。

 

では3つの重要事項と無関係なのかというと、まったく違っていて、むしろこの3つのすべてと密接な関係があります。

 

なぜならば「3つの重要要素」は文字にしたり図式化したりできる「仕組み」です。

もちろん「仕組み」はとても大切です。しかし「仕組み」を創ったり、実践していくのはとりもなおさず私達「人間」です。「人間」には好き嫌いややる気がある、やる気がないといった感情があります。その感情が起こるきっかけはやはり「人間同士のやりとり」言わば人間関係なのです。

 

【相互理解の本質について】

【人工知能と人間との大きな違いとは】

私達人間と人工知能を分ける大きな違いは、「感情があるかないか」だと思います。

つまり「心の有無」です。

 

映画の中ではアーノルド・シュワルツネッガー扮するターミネーターのように人の心を理解する人工知能もありますが、現実的には難しいのではないかと思いますし、もし感情を持ち表現する人工知能が現れたならば、それは最早人工知能とは呼べないのではないかと思います。

 

【相互理解は人間だけが成しうる新しい力】

つまり「相互理解」は、人が本来持っている最高の能力のひとつである「感情」「意識」「心」を通い合わせることによって引き出される「新しい力」だと思うのです。

 

今後人工知能が人間に代わって様々な仕事を担っていくようになるでしょう。

逆に申し上げるならば、人間は今後人工知能が出来ない分野の仕事に特化した仕事を創造していく必要に迫られてくるでしょう。

 

その時こそ相互理解を根底にした職場づくりが出来ているか否かによって、社会から必要とされる会社となるか、人工知能にとって代わられて消え去っていくのか、時代の審判が下されることになると思うのです。